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人を対象とする医学系研究Q&A【研究資金、COI】

(2015年9月29日初版。必要に応じて随時改訂いたします。ご意見は学会事務局までお願いいたします。)

4.奨学寄附金と臨床研究、研究資金

産学連携自体は推奨されるべきものです。また、奨学寄附金に含まれる資金は必ずしも企業からの寄付金だけに限らず研究助成金も含まれて多岐に渡ります。しかしながら、奨学寄附金を用いる場合、企業との関係にあいまいさが残ることは否めず、本項はあいまいさがある状況での対応を示したものです。絶対的なものではなく、企業自身の考え方や将来において社会的背景の変化によっても変わりうるものです。

原則は、研究者ならびに研究機関みずからが、研究の信頼性を損なわないように、また社会的疑念を抱かれないように資金源や研究計画に注意を払い、COI状態の適切なマネージメントに務め、さらにはCOI状態に疑義が生じたときには適切に説明責任を果たすことです。

Q4-1 奨学寄附金とはどのような資金ですか?それ以外の研究資金にどのようなものがありますか?
A4-1

奨学寄附金は、国立大学法人などが奨学(研究・教育など)のために受け入れる寄附金です。寄付者は、企業に限らず、財団や個人の場合もあります。企業や財団が公募する研究助成に応募して得られた資金は、大学の場合は奨学寄附に入れ、その規則の中で使用します。

企業との関係では、その他に受託研究や共同研究の場合の研究資金があります。最近では、企業が自社製品と関係する医師主導研究を公募しているものもあり、企業と契約を結んで共同研究などの形態で研究資金として用います。

企業と関係しない各種省庁や日本医療研究開発機構(AMED)などの公的資金(競争的資金)は、申請した臨床研究に対する研究資金として用いることができます。

Q4-2 特定の薬剤に関する研究を、それが関係する製薬企業からの奨学寄付金で行うことは可能でしょうか?
A4-2

特定の薬剤に関する研究は、その薬剤が関係する製薬企業からの奨学寄付金で自主研究として行うのでなく、当該製薬企業との共同研究や受託研究など契約を用いて実施することが推奨されています。適切な契約の形態を採りつつ、資金提供を受けることが必要です。

2014年4月22日に日本製薬工業協会から「製薬企業による臨床研究支援の在り方に関する基本的考え方」が発表されており、以下の記載があります。

2. 臨床研究への支援の在り方に関する基本的考え方(抜粋)
自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供や物品供与等の支援は、契約により実施すること。

3. 奨学寄附金の提供の在り方(抜粋)
奨学寄附金は本来の趣旨に則り適切に提供することとし、今後自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供の支援方法としては用いないこと。
なお、奨学寄附金により自社医薬品に関する臨床研究が行われていることを知った場合は、できる限り早期に契約に切り替えること。

Q4-3 奨学寄附金を用いた臨床研究が進行中です。研究をストップしなければなりませんか?
A4-3

新規の研究ではなく、既に倫理委員会を通して進んでいる研究について、すぐに研究をストップする必要はありません。ただし、先方の企業の体制が整い次第、共同研究などの契約をともなう研究に切り替えていくことが求められます。

2014年4月22日の日本製薬工業協会からの「製薬企業による臨床研究支援の在り方に関する基本的考え方」:奨学寄附金により自社医薬品に関する臨床研究が行われていることを知った場合は、できる限り早期に契約に切り替えること。

企業が体制を立ち上げるにも時間がかかりますので、契約に切り替わるまでは、その経緯を双方が記録しておくことをお勧めします。ただし、その内容をどうすればよいかは明確な回答はありません。既に研究のほとんどが終了していて発表段階にある場合など、企業に確認の上、発表時に資金源を公表すべきです。

Q4-4 特定の製薬企業からによらない奨学寄付金を用いて、研究者主導の臨床研究を実施することは可能ですか?
A4-4

特定の企業からの奨学寄付金を用いて、特定の薬剤を用いた研究者主導研究を行うことは、たとえ寄附元の企業の製品の研究ではないとしても好ましくありません。製薬企業との共同研究もしくは受託研究の形式が適当です。特に、エビデンス構築につながる大規模臨床試験は奨学寄付金以外の研究費を用いて実施すべきです。一方、特定の薬剤を用いない臨床研究の場合、製薬企業からの奨学寄付金を用いることも可能です。但し、その場合でも、所属研究機関の利益相反委員会等でCOIマネージメントが確実になされていることが必要です。

複数の製薬企業からの奨学寄附金を用いて研究者主導研究を行うことは不可能ではありませんが、透明性やガバナンスを高める観点からは、やはりなんらかの契約によることが望ましいです。なお、企業とは関係ない財団あるいは個人からの奨学寄附金を用いた研究者主導の臨床研究の実施は可能です。

Q4-5 財団からの助成金を用いて臨床研究を行う場合の手続きは、どのようにすればよいのでしょうか?
A4-5

大学では、財団からの助成金は、授与者から大学への個人的な寄附として取り扱われる結果、奨学寄付金の一種になります。従って、研究施設内での経理上の取り扱いは他の寄付金と同様です。しかし、この助成金が特定の製薬企業との関係が明らかにない場合は、助成金の目的に即した(臨床)研究に使用可能です。特定の製薬企業との関係が強い助成金に関しては、所属研究機関の利益相反委員会等でのCOIマネージメントの対象となり、所属機関で定める所定の手続きが必要です。

Q4-6 財団の助成金などを資金源としている場合、その財団に対して個別の研究目的で企業の資金が提供されている場合は、研究発表時に財団名だけでよいでしょうか、あるいは財団と企業名を記載すべきでしょうか?
A4-6

このような形で企業が研究助成を行うことはなくなると考えられますが、過去の研究でこのような形態があった場合、一般には企業名の公表も伴うべきであると考えられています。ただし、公募の上厳格な審査を経て助成金を交付するケースなどではスポンサーである企業の利害関係は希薄化しているということもでき、個別のケースで状況が異なる場合もありますので、財団および研究発表を行う学会あるいは雑誌社にも適宜問い合わせて対応するのが望ましいです。

Q4-7 A社から奨学寄付がある場合A社の薬剤を用いた医師主導研究はできないことが原則としても、奨学寄附金は様々な形態(個人の寄付、公益法人や財団などからの公募型の助成金、など)が存在し、それらの資金を用いる場合A社の薬剤に関する臨床研究は倫理的に問題ないのではないでしょうか?
A4-7

研究資金に関して第3者から疑念を抱かれないことがガイドラインの趣旨です。所属研究機関の利益相反委員会等のCOIマネージメントの下で、社会的に十分な説明ができると研究者が判断してA社以外からの資金を用いた臨床研究として実施することは研究者の自己責任の範囲です。

例1.
A社を除く複数社からの寄付で研究を実施するという説明:他の企業からの寄付金で特定の薬剤の臨床研究を行うという説明は、社会的疑念を抱かれる可能性が高い。

例2.
寄付金全体に占めるA社からの寄付金の割合が少なく、A社以外の企業からの寄付金を用いたという説明:複数社からの資金を複数社の製品に分けて研究に使うことが想定され、結局A社の資金を用いているのと同じと解釈され、疑念を抱かれる可能性が高い。

例3.
研究に要する資金と比較して、A社からの奨学寄付が全体の10%以下など低額であるという説明(例えば1000万円の研究規模で、A社からの使途を限定していない寄付が50万円の場合):1000万円の資金にA社以外の企業からの使途を限定していないいわゆる奨学寄附金が含まれる場合は、例2と同じ理由で疑念を抱かれる可能性が高い。

例4.
研究に要する資金の総額を担保する十分な競争的助成金(A社が関係しないもの)や個人の寄付金があって、実際にA社が関係しない資金を用いて研究を実施したという説明:会計管理の単位となる組織の大きさ(例えば学科全体で管理しているとか)によっては説明が可能と考えるが、社会的疑念が提示された場合は、速やかに研究責任者自身が説明責任を果たす必要がある。

例5.
A社からの奨学寄附金が透明性ガイドラインで公開されない範囲であるから用いることは可能とする説明:趣旨に反しており、原則的に不可。論文公表時に金額によらずにCOI状態を報告すべき場合があり(ICMJEなど)、結果として社会的疑念を抱かれる。

Q4-8 奨学寄付によっては、自社の薬剤の効能と関係する臨床研究を避けて別の使途を記載することがあるが、高血圧の薬剤を扱っている1社からでも奨学寄付があった場合、奨学寄附金を用いた高血圧の臨床研究はできないのでしょうか?
A4-8

高血圧の臨床研究全般ができないとまで考える必要はありません。奨学寄付を受けている企業の製品についての臨床研究はすべきでないというのが原則です。ただし、その企業の製品が属する降圧薬のクラスエフェクトの研究はCOI状態について疑義が生じる可能性がありますので、所属研究機関の利益相反委員会等のCOIマネージメントを受ける必要があります。

Q4-9 競争的な助成金申請によって製薬企業が関係する助成金を得た場合、個人名で奨学寄付に移すのが一般的ですが、この寄付は企業とは独立していると理解してよいでしょうか?
A4-9

企業と独立した財団が、別法人として独自に資金の運用や公募課題の審査を行っている競争的助成金は企業と独立していると理解してよいです。ただし、企業内で公募課題の審査を行っている研究助成では、競争的であっても企業と独立しているとは言えません。

Q4-10 臨床研究を実施するにあたり、企業から医薬品、医療器具・設備などの資材あるいは労務などを提供してもらうことは可能ですか?
A4-10

企業と契約を結んで受け入れることは可能です。ただし、データ解析業務等研究結果や研究の中立性に疑念を抱かせるような労務提供は禁止されています。また、資材や労務の提供については研究計画書や同意説明文書に記載する必要があります。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス」の52-53ページにどの範囲まで記載すべきかについて記載があります。当該研究機関や研究者の置かれた立場等により様々なケースが考えられるため、各研究機関において、利益相反の管理のために設けている規程等も踏まえつつ、記載の基準を決定しておくことが望ましく、判断に迷う場合は倫理審査委員会の意見を聞くことが推奨されると記載されています。

Q4-11 委受託研究や共同研究などで企業と契約を結んで研究をする場合、研究によって得られる成果および情報の取扱いと帰属について注意しておくべきことはありますか?そのほか契約時に取り決めておくべき注意点があれば教えて下さい。
A4-11

研究成果や情報の取扱いと帰属は、契約時に定めておく必要があります。データ所有権と公表の権利、公表前のレビュー、試験結果の登録などです。とりわけ、研究実施によって得られた知的成果としての情報は、原則として研究者側に帰属すると考えられますが、企業側があらゆる研究データの使用を独占あるいはコントロールしようとする可能性もあります。また、人を対象とする医学系研究の結果は原則として公開すべきものです。研究者と企業で公開に関する意見が異ならないように、あるいは異なった場合の対応などを事前に明確にしておく必要があります。論文での発表が望ましく、論文発表に至らない場合でも、事前登録されたデータベース等へ成果の要約を情報提供することが必要です。

その他、研究者と企業双方の研究遂行における責任や権利を明確にしておくことも必要です。試験の進捗報告とデータの連絡(定期報告・結果報告書)、助成金の拠出(マイルストン・ペイメント、未使用金の返還)、試験薬の拠出、安全性監視活動(ファーマコビジランス)、期限内の有害事象報告義務、契約の変更などです。

3. 臨床研究開始時の倫理審査・COIの管理 5. 研究者個人のCOI自己管理:COIの開示
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